会長挨拶

清水猛史会長

第60回日本鼻科学会総会・学術講演会
会長 清水 猛史(滋賀医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)

第60回日本鼻科学会総会・学術講演会を担当させていただくにあたり、本学会会員の皆様に心より感謝申し上げます。会期は2021年9月23〜25日(木〜土)の3日間、大津市の琵琶湖ホテルと、隣接する大津市民会館にて、開催いたします。本来は、2020年10月22〜24日(木〜土)に第20回Asian Research Symposium in Rhinology(ARSR)と共催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により海外の先生方の参加ができなくなり、1年延期させていただきました。

第59回日本鼻科学会は、急遽順天堂大学の池田勝久先生のもと、2020年10月10〜11日(土〜日)に順天堂大学で開催されました。「ニューノーマルの鼻科学」をテーマに、Web配信などを含めた新型コロナウイルス感染症下での新しい学術講演会の在り方が提供され、大変な盛況でした。短い準備期間にも関わらず、最先端の学問とアイデアにあふれた構成で、厳しい状況の中で企画・運営していただいた池田勝久先生には心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

本学会では、予定通り第20回Asian Research Symposium in Rhinology(ARSR)を共催し、学会のテーマも「From Japan to Asia and the World (日本からアジアへ、そして世界へ)」としております。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、今後も予断を許さない状況ですが、今回は延期することなく、何らかの形で学会を開催させていただく予定です。また、60回目の記念大会を迎えるにあたって、鼻科学会60周年の記念シンポジウムや記念式典を企画し、我が国の鼻科学の過去、現在、未来について考えていただく機会を設けたいと思います。

近年の我が国における鼻科学の発展は著しく、急性鼻副鼻腔炎診療ガイドラインのもと薬剤耐性に配慮した適切な抗菌薬選択が行われ、慢性副鼻腔炎に対してもマクロライド療法の有用性と適応が確立されるとともにその作用機序が解明されました。好酸球性副鼻腔炎の診断基準が確立され、病態解明が進むとともに、Th2サイトカインに対する抗体療法が導入されています。アレルギー性鼻炎には、ダニとスギの標準化エキスによる舌下免疫療法が新たに普及し、抗IgE抗体療法が導入され、獲得免疫に加えて自然免疫の役割や制御性T・B細胞の機能などが注目されています。嗅覚では基礎研究が発展し、嗅覚障害診療ガイドラインが作成され、嗅神経性嗅覚障害に対する当帰芍薬散や嗅覚トレーニングの有効性が検討されています。内視鏡下鼻科手術の進歩も目覚ましく、ナビゲーションシステムなどの手術支援機器の開発と相まって、鼻副鼻腔炎から良性・悪性腫瘍、眼窩内疾患、頭蓋底疾患へと適応が拡大しました。また、手術手技の教育が重要になり、手術技能の認定制度が確立されようとしています。

本学会では、こうした鼻科学の発展に合わせて、最先端の特別講演、シンポジウム、教育講演、耳鼻咽喉科領域講習や感染・倫理・安全などの共通講習を予定し、40歳以下の若い先生方のためのベストプレゼンテーション賞も企画します。また、近年の鼻科学会の目玉企画の一つである、基礎ハンズオンセミナーと臨床ハンズオンセミナーをさらに充実させ、国際化の中での研究計画と成果発表の方法を教授する国際化プログラムも企画しています。

さらに、Asian Research Symposium in Rhinology(ARSR)は私の恩師の故坂倉康夫先生とSeoul National UniversityのYang-Gi Min先生によって1996年に設立された学会で、アジア諸国の鼻科学の発展と親密な国際交流を目的として、これまでに日本、韓国、台湾、中国、香港、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インドなどアジア各国で開催されました。我が国では第1回が鈴鹿、第3回が名古屋、第16回が東京で開催され、本学会が4度目の開催です。第20回の節目の学会を迎えるにあたり、記念式典も企画いたします。

状況が許せば、ARSRの共催を通して、アジア諸国を中心に多くの海外の先生方の参加が期待されます。アジア諸国からはNative Speakerの参加者はほとんどいませんので、若い先生方は遠慮せず、是非英語での発表や質問にも挑戦して下さい。鼻科学会ではこれまでインターナショナルセッションや日韓セッションを通して、国際化を目指して来ました。本学会では、Mayo Clinicアレルギー部門の紀太博仁先生に、30年にわたる米国での研究生活の経験をもとに、海外での研究生活や英語での発表・論文作成に役立つお話もお願いしておりますので、楽しみにして下さい。

多くの先生方、特にこれから活躍される若い先生方のご参加をお待ちしております。ハンズオンセミナーなどは参加人員に限りがありますので、ホームページを通して早めに申し込んで下さい。京都駅から大津駅まではJRで10分と便利です。大津市の宿泊に限りがある場合は京都駅周辺にお泊りください。

琵琶湖ホテルは湖畔に位置し、会場から琵琶湖が一望できます。是非、湖畔を散策しながら日頃の疲れを癒してください。大津市には石山寺や三井寺があり、少し足を延ばせば世界遺産の比叡山延暦寺や彦根城、安土城址などがあります。豊かな歴史と琵琶湖の自然にはぐくまれた滋賀の地をお楽しみください。

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