ごあいさつ

 第44回日本鼻科学会総会並びに学術講演会を大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室が担当させて頂くことになりました。学会の歴史と日本耳鼻咽喉科学会における鼻科学の重要性を考えると身が引き締まる思いです。特にここ数年の医療と医学の領域における構造的変化は学術団体である学会の姿勢に大きな影響を与えつつあります。例えば、医学部におけるPBLチュートリアルの導入により、鼻科学の系統講義や各論は必要最小限のものになりつつあります。慢性副鼻腔炎の治療について、殆どの施設で手術は内視鏡下に行われています。また、病態も非アレルギー性の好酸球浸潤による難治性副鼻腔炎など新しい展開を示しています。加えて治療や診断のエビデンスが求められています。

 耳科領域を代表する鼓室形成術では「耳漏が止まるや、聴力が改善する」などのアウトカムが存在します。検査についても聴力検査の精緻度は高く、十分に信頼されたものであります。一方、鼻科領域における各種検査や治療には残念ながら客観評価や成果の上で問題を残している傾向があります。しかしながら、鼻科領域の臨床は耳鼻咽喉科医にとって専門性も高く、その重要性は耳科領域に劣るものではありません。

 この様な社会的また耳鼻咽喉科専門性の問題を踏まえて、「鼻科領域の手術の問題点」と「副鼻腔炎治療のエビデンス」を大きな流れとして本学会で取り上げたいと考えています。前者は臨床問題懇話会におけるシンポジウム「鼻科領域手術の医療過誤の実態と対応」で内視鏡手術の危険性と医療過誤の実体、その対応を取り上げて頂きます。その問題提起を受け、教育パネル「内視鏡下鼻内手術の教育研修」では内視鏡手術の教育体制と医師の技術度評価をご紹介頂きます。副鼻腔炎治療のエビデンスでは耳鼻咽喉科専門処置としての自然口開大処置等の有用性をシンポジウム「慢性副鼻腔炎処置のエビデンス」で多方面から論じて頂きたいと思っています。その理解を深めるものとして、ガイドラインの問題を取り上げました。副鼻腔炎のガイドラインは本学会の主導で現在編纂が進んでいます。欧米や韓国における副鼻腔炎治療のガイドライン作成の姿勢をシンポジウム「外国における副鼻腔炎診断と治療のガイドラインの現況」で報告していただきます。その他の教育パネル「鼻副鼻腔形態の客観的評価」、「嗅覚検査の有用性と信頼度」などが、鼻科学臨床における診断学の客観評価に結びつくものと考えています。

 基礎問題研究会では「鼻科領域の炎症研究の新しい展開」を取り上げました。アレルギー炎症に限らず、上気道炎症の多様性と普遍性を論じて頂ければ幸いです。特別講演はUCLAのSaxon教授にお願いしました。最新のアレルギー治療のご紹介をお願いしてあります。また、教育パネル「アレルギー性鼻炎の新しい免疫療法」では臨床応用の可能性の高いものについてご紹介頂きます。全体として臨床に重きを置いた構成になった感がします。一般口演での活発なご参加をお願いします。

 盛りだくさんな企画ですが、一般口演は原則ポスター形式で、口演もお願い致します。ご負担が少なくなるように考えていますが、宜しくご了承ください。

 9月末の大阪は台風来襲さえなければ、最も過ごしやすい季節です。食い道楽も満喫していただけると思っています。学会懇親会でも新しい企画で全国から皆様をお迎えしたく存じます。多数の会員のご参加をお願い申し上げます。

2005.04.01.   高槻にて
第44回日本鼻科学会会長 竹中 洋


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